卒業メッセージ

特進クラスの担任でなかったら、別な指導をしていました。
ここで特進クラスを否定したいと思います。

皆さんは今までの常識が通用しない時代を生きることになります。
日本は歴史上はじめて「人口自然減」の時代に突入しました。
2022年1月の日本の推計人口は1億2544万人です。
2030年には日本の人口は1億1662万人になると予測されています。
1億2500万人からの882万人減です。
2022年1月の大阪府の推計人口が879万7153人ですから、2030年までには日本から大阪府規模の人口が消えてしまうということです。
2022年1月の推計人口数23位の熊本県は172万5364人となっていますので、2030年には「日本から平均的な県が5つ消える」という見方も成り立ちます。

皆さんは歴史上で誰も経験したことのない人口自然減時代に生きることになります。
いままでの常識は通用しません。
私は、このような時代に必要な力は「学ぶ力」と「コミュニケーション能力」だと思っています。
学ぶ力には「好きなことを学ぶ力」と「必要なことを学ぶ力」がありますが、特進クラスの皆さんは「必要なことを学ぶ力」も身についてきているはずです。

コミュニケーション能力を取り上げます。
以前、ある生徒が「山奥ニートになりたい」と言っていました。
私も山奥での自給自足の生活に憧れたことがあります。
人間の根源的な力が試されているような気がするからです。
その生徒に「山奥ニートか。人間力が鍛えられそうだな」と応えようとしてハッとしました。
人間は社会的な動物です。
社会の中でしか人間として生きていくことはできません。
となると、人間力っていうのは、「社会の中で他者とうまく関係を作る力」なのではないだろうか?
これがきっかけで、人間力とはコミュニケーション能力なのだと思うようになりました。

コミュニケーション能力の必要条件は「受容力」だと思います。
他者を受け入れると人が集まってきます。
一方で、バリアを張ってしまうと人は寄ってきません。

ここで、冒頭に戻ります。
特進クラスを否定しましょう。

同世代の半数は大学には進学しません。
2020年度の大学進学率は54.4%です。
一定レベルの大学に一般選抜で進学するのはその中でもわずかです。

皆さんは「学ぶ力」を身につけてきました。
今までの常識が通用しない時代には必要なものです。
皆さんを誇らしく思います。

一方で、皆さんは狭い世界で生きてきましたし、特進クラス担任として私は皆さんを狭い世界に閉じ込めてきました。
私が心配しているのは、皆さんが「大学の序列」や「大学入学方式」にいつまでもこだわってバリアを張ってしまうことです。

本日皆さんは卒業しますが、同時に自分の中に作ってしまった特進クラスの壁をぶち壊しましょう。
厳しい状況の中で不安な気持ちに負けずに学び続け失敗してきた皆さんです。
他人を受け入れることのできる下地はできていると信じています。

卒業おめでとう。
新しい世界へようこそ。

卒業メッセージ
トップへ戻る