積み上げ方式と逆算方式

鴨川会長がジムのメンバーに話す場面です。
「キサマらを強くするのは、毎日の積み重ねじゃ。じゃが、毎日の積み重ねがキサマらを弱くする。漫然と日々を過ごすなっ!自分に足りないもの、自分に必要なものを常に考えて行動せよ!」

ハッとしました。
名伯楽、平井コーチの言葉が頭をよぎりました。
「06年のことなんですけどね、中村礼子が自分の中で、なーんか壁にぶち当たっていた。どうしてなんだろう、といろいろ話してみて、北島康介と中村礼子では考え方が違うんだと実感したんです。康介は、オリンピックで金メダルを獲るという目標があって、課題をクリアするために必要な練習をしている。礼子の場合は、練習をとにかく一生懸命やれば速くなると考えていたんです。練習を頑張ることが目標みたいになってた。
言ってみれば、目標のために練習する逆算方式と、練習していけば速くなれるという積み上げ方式との違いですね。」

この話を生徒に紹介しましたところ私自身、勉強になったことがありました。

ある生徒が「私は今まで積み上げ方式だった。どうしよう。」と言ってきました。
私から見れば、彼女は逆算方式です。
志望大学合格に何が必要かを明確に理解して、それに向かって人並み以上の努力をしていました。
逆算に基づいて、努力に努力を重ね、3年生の夏以降の模試ではセンター本番の目標点数を取れるようになっていました。
逆算に基づいていたのに、なぜ彼女は自分が逆算方式だとは思わなかったのでしょう?
おそらく、彼女は積み上げていたからです。
積み上げて、積み上げて、積み上げて、といった印象が強すぎたのでしょう。

大学受験には「マニュアル本」があります。
特徴は逆算方式。
こういった本は「ゴールから逆算して必要なものを揃える」といった視点で書かれています。
「✕✕の分野で得点するには、〇〇をやって、△△をやればいい」なんていう風に。
なんだか「ゲームのアイテム集め」みたいです。
合言葉は「合理的な努力」です。
しかし、その背後に「要領よく合格」や「最小限の努力で合格」といった思想を感じ取ってしまうのは私だけでしょうか?
「最小限の努力でライバルに勝つ」といった思想は非合理的だと思うのですが・・・。

さて、生徒の話に戻ります。
鴨川会長と平井コーチの話を紹介されて、積み上げていた先輩は「自分は逆算方式ではない。積み上げ方式だ」と誤解してしまったかもしれません。
一方、積み上げていなかった先輩は「自分は逆算方式だ」と誤解し、ゴールに最短距離で向かっていると錯覚しているのかもしれません。

大前提は、逆算方式です。
鴨川会長も平井コーチも言っているとおりです。
しかしながら、これは積み上げ方式を否定しているものではありません。
積み上げ方式と逆算方式は相容れないものではありません。
積み上げないで成功するなんてあり得ないと思います。